平行線
2001年 木戸隆行著
僕はかなりの距離を走ってきたようだ。にもかかわらず、その道のりを少しも思い出すことができない。壊れたプラスチックの人形を宙吊りにして、パトリック・ボカノウスキーのように剣でめった刺しにした夕暮の部屋。瞬く間に積みあげられた本という美の山。閑静な町に新築された巨大な矯正リングのモニュメント。リアルタイムに笑うレコードジャケット。脱ぎ捨てられたミュール。これらはたった今とりつくろった思い出にすぎない。
僕が失ってきたものと今得ているものとの間には、どんな共通点があるだろう?
だから今すぐ隣人に確認してみるべきだ、平行線はついに交わったのですか?と。あるいは、それらは互いを乗り越えたのですか?と。そんなことは知らないが、と彼は続けるだろう、それでも罪人は罪を犯し、泥棒は盗み続けるだろうね。
──そして僕はまたすべてを忘れてしまうのだ。
僕が失ってきたものと今得ているものとの間には、どんな共通点があるだろう?
だから今すぐ隣人に確認してみるべきだ、平行線はついに交わったのですか?と。あるいは、それらは互いを乗り越えたのですか?と。そんなことは知らないが、と彼は続けるだろう、それでも罪人は罪を犯し、泥棒は盗み続けるだろうね。
──そして僕はまたすべてを忘れてしまうのだ。