Original Contents: © LOGOS for web (http://www.logos-web.net/)



どこから来てどこへ行くのか、いやつまらない

2001年 木戸隆行
 文字を見つめる、文字を見つめる文字を見つめる、後から突き刺される後から突き刺される、どこから来てどこへ行くのか、いやつまらない、裏側、裏窓、裏通り、路地。路地裏?路地の、裏?表、矢面、巧み、功夫、つるはし、炭鉱。船乗り、航路、マダガスカルの鳥、色とりどり、真正面、受ける、矢面、受けて立つ、受けて立つ。後から突き刺される、受けて立つ、突き刺され、後から突き刺され、それを受けて立つ。
 電車が遠くで通り過ぎる、遠くで?遠くで『通り過ぎる』?乗りたい?乗らない、乗りたいかどうか分からないが、乗らない。
 ある白昼に転がされた紙屑、白い、真っ白な、くちゃくちゃに丸められた、くちゃくちゃに『丸められた』?紙屑。転がり落ちて行く。緩やかな、真っすぐに下りていく坂道を、弾みながら、弾みながら、転がり落ちて行く。転げ落ちて行く?転げ落ちて行く。日のよくあたる道を。路地を。路地裏を。
 あるときは風に、風に、


 読み飛ばし。


 現実に関係するところの言葉なり意味。十分に表現された、あるこうあるべき。ためらいへのためらい。後ろめたさとうしろだて。後から突き刺される。受けて立つ。画家の文章、音楽家の文章、詩人の文章、批評文。批評家。十分に意味の理解できる文、十分に理解できない感性。分かる=分ける。意味の理解できる=意味の分かる、意味の分かる=他の似ているが微妙に意味の違う意味とその意味を分けることのできる、
 階段、上れるがただそこに収納されるためだけに壁に立てかけられているハシゴ、上れるが上らない梯子。
 分析よ、思想よ、サヨナラ!まるで見たこともないような素朴な色の青空に浮かぶ小さな小さな飛行機の影に向かって次々に発せられる言葉とそれを聞き流す耳。なるべく小さな器に盛られた大粒のざくろ。その実の一粒一粒を潰していく快感に打ちのめされた僕は、いつしか背中から囚われの身となって、宇宙のごとく黒く輝くだろう。見違えたなあ、誰かが言った。男の声だろうか?それも中年の、少し太めで浅黒い肌の男だ。白いスラックスと白いゴルフキャップのようなものを被っている。つまり僕のなかの極度に象徴化されて歪んだ加山雄三に他ならないだろう。その笑顔になるにはどうすればいい?いや、彼ではなく彼だ。もはや説明する余裕のない密度で迫り来る言葉の渦のなかからこの左右五本の指を解放していく作業は、まるでそれとは正反対のことに集中しているかのようである。見た目にも美しい。時々古い型の赤いスポーツカーの助手席のドアを開けて、そのなかに乗り込もうとする目の離れた父親である僕とその関係者は、クリーム色の本革のシートに摩擦して、小気味よい音を立てる。やや間があって、すぐさま話しかける、来い、濃い、恋!それは冗談だが、……サヨナラ、冗談!見るほどにドライな……今日はダメだ。